先の記事の続きです。
前回の記事はこちらです。
引用はこちら
Pre-clinical liver cirrhosis data presented at AASLD 2016(MiNA社HPのClinical Developmentより)
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3.RESULT(結果)
先の実験の結果のグラフが7つ載せてあります。
3-1.MTL-CEBPA reverses histological features of liver fibrosis at Week 13
表題は「MTL-CEBPAは、13週間試験で肝線維症の組織的な特徴を逆転(回復?)させる。」
という意味だと思います。
縦軸はKnodell Scoreで、上手くヒットしませんでしたが、
肝臓障害のレベルを示す指標だと思います。
被験者に行われたの4種類です。
1.CCI4への投与すらしなかったもの(Normal Control)
2.11週間までCCI4を投与しただけのもの(PBS)
3.NOV340 + siFLUCを投与したもの(NOV340 + siFLUC)
4.MTL-CEBPAを投与したもの(MTL-CEBPA)
4つを良好な順に並べると、1⇒4⇒2⇒3となります。
1は毒を与えていないので最も良好は当然で、
次に薬になるMTL-CEBPAを投与した4もいい結果です。
次に2と3ですが、
やや3が悪い結果となっています。
3はどういうものかというと、
MiNA社のHPに論文があってそこに書いてあります。
An inactive siRNA targeting firefly luciferase (“FLUC”) was used as a negative transfection
control for experiments using modified saRNAs.
siFLUCというのはsaRNAと反対の不活性化させる原薬というわけです。
つまり、3は4の反対の効果を狙っているものになります。
そうなると2よりも3が悪くなってくれる方が
説明としてはスムーズになりますし、
今回の結果は狙い通りのものになります。
危険率というか有意差ですが、
2と4の比較ではなく、
3と4の比較だという点は注意です。
あくまでも肝臓の悪化が進行している想定での比較となります。
この比較は棒グラフは全て当てはまります。
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3-2.MTL-CEBPA reverses markers of liver injury at Week 13
表題は「MTL-CEBPAは、13週間試験で肝臓損傷のマーカー(特数値?)を逆転(回復?)させる。」
という意味です。ちょっと苦しいですが(笑)
内容はシンプルで、13週間の試験でのASTとALPの2つの数字を追いかけています。
2つの数字は肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われるようです。
肝機能検査で「AST(GOT)」と「ALT(GPT)」の数値が高かった場合はどうすれば?(COLOR+DAのHPより)
リンク先で書いてある内容を参考にすると、
どちらもタンパク質を分解する酵素。
肝臓機能が低下することで増えすぎるもののようです。
ASTは肝臓だけでなく心臓などにも存在するが、ALTはほぼ肝臓のみ。
数値的にASTのみが回復しても
肝機能が改善されたかは疑わしいという結果になるわけです。
出来ればASTとALT両方、少なくともALTが回復(減少)すれば良い結果になります。
グラフを見ますと、
どちらもしっかりと有意差を示していますね。
特にASTは0.0001以下と素晴らしいです。
このことから肝機能を向上せている可能性は示されています。
siFLUCはALPでやや悪化してますね。
ASTではほぼ同等。(どちらも対PBS)
3-3.MTL-CEBPA restores normal liver function at Week 13
表題は「MTL-CEBPAは、13週間試験で通常の肝臓機能を回復させる。」
という意味です。
restoreとreverseを使い分けられてますね。
今回は「Alubumin(アルブミン)」と「Bilirubin(ビリルビン)」です。
アルブミン(Wikipedia)とビリルビン(Wikipedia)のリンクを。
どちらも肝機能が関係するものです。
アルブミンは肝臓で生成されるタンパク質。
ビリルビンは肝臓から胆汁として分泌される分解分泌物。
正常であればアルブミンは増加、ビリルビンは減少するようです。
結果はMTL-CEBPAは11週目から13週目にかけて正常値に近づいています。
肝機能が正常化されている傾向がみれます。
アルビミンはやや分散が大きいようで、
今回の試行数では有意差としては小さくなってます。
それでも良化傾向はありますね。
siFLUCはどちらでもやや悪化してますね。(対PBS)
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3-4.MTL-CEBPA restores normal liver function at Week 13
表題は「MTL-CEBPAは、13週間試験で通常の肝臓機能を回復させる。」
と先ほどの3ー3と同じです。
こちらは「Prothrombin Time(プロトロンビン時間)」と「Ammonia(アンモニア)」です。
プロトロンビン時間(Wikipedia)とアンモニア(Wikipedia)を参照下さい。
プロトロンビン時間は血液の凝固時間、
アンモニアは尿から出てくる毒素です。
これらはどちらも肝臓が関係します。
プロトロンビン時間は短いほど良好で、
アンモニア量は少ないほど良好です。
グラフを見ますと、
どちらも優位にMTL-CEBPAが良化しています。
siFLUCはやや悪化というぐらいです。(対PBS)
3-5.MTL-CEBPA attenuates hyperammonaemia up to Week 36
表題は「MTL-CEBPAは、36週間試験で高いアンモニア血中濃度(?)を減少させる。」
アンモニアの濃度をグラフ化しています。
8週目からMTL-CEBPA等を投与しますが、
そこからPBSと比べて明らかにアンモニア濃度の上昇が抑えられています。
下がるわけではないですが。
また、投与をやめた23週目以降も上昇幅は限定的で
PBSよりも明らかに低いアンモニア濃度を保っています。
持続性が良好な傾向が見られます。
3-6.MTL-CEBPA attenuates ascites up to Week 36
表題は「MTL-CEBPAは、36週間試験で腹水を減少させる。」
「ascites」は腹水という意味で、腹水についてはこちらを参照下さい。
腹水(Wikipedia)
腹腔内には正常な状態でもごく少量の液体があるが、
血漿蛋白の減少による膠質浸透圧の低下門脈圧亢進腹膜炎、
悪性腫瘍の腹膜播種、肝癌の破裂といった原因により、
多量の漏出液や滲出液が見られるようになる。肝硬変ではアルブミン合成能低下及び門脈圧亢進により前者のタイプ、
腹膜の炎症や癌では後者のタイプが見られる。腹水(Wikipedia)
という説明がありますので、肝硬変で起こりやすい症状のようです。
この結果も8週目を基準にされていますが、
投与後からMTL-CEBPAではPBSよりも発生率が明らかに低く、
23週目以降でも発生率が急激に上がることは見られません。
PBSでは21週目に明らかに飽和しているにも関わらずです。
MTL-CEBPAの効果の持続性が非常に高いことが見られます。
3-7.MTL-CEBPA improves Week 36 survival
表題は「MTL-CEBPAは、36週間試験での生存率を改善させる。」
そのままマウスの生存率です。
PBSでは35週間で全滅です。
CCI4の威力恐るべしですね。
一方で、MTL-CEBPAの方では18~19週目で1匹、
35週目で1匹が亡くなりますが、
7匹は最後まで生存しています。
投与をやめても急死しないのは大きいですね。
毒(CCI4)の投与は続けられているにも関わらず、ですから。
2018年 2月 17日 記述
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